2023.07.21
「楽の戯れ」に寄せて③

「楽の戯れ」に寄せて③

シェンクの「楽の戯れ」は
あの、ジョバンニ・グリエルモ氏に
献上されました。

ジョバンニ・グリエルモ氏です。

……
…誰?(^_^;)

彼は、通常ヨハン・ヴィルヘルムと呼ばれた
ライン地方を支配した宮中伯です。

♬♬♬

1660年にアムステルダムで生まれたシェンクは
1696年頃、ヴィルヘルム氏の命により
デュッセルドルフの宮廷音楽家に就任しています。

就任以前に、
op.2として現存するヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音の曲集
そして、楽譜を入手することはできなかったのですが
1687年にオランダ語と通奏低音による歌曲集を出版しています。

ヴィオラ・ダ・ガンバの作曲者として主に知られるシェンクですが
最初の出版はオランダ語の歌曲集だったのです。

この作品は、「バッカス、セレス・エン・ヴィーナス」という
前年に上演されたオペラのアリア集です。
「オペラといえば、イタリア語」という常識があった時代に
母国語によるオペラを世に出した、
それは20代のシェンクが成し遂げた大功績だったといえましょう。

♬♬♬

ところで、今回私達は
「楽の戯れ」と邦題をつけましたが
原語は「スケルツィ・ムジカーリ」といい
そもそも、モンテヴェルディによる歌曲集の題名です。

モンテヴェルディによる
言葉と音楽が互いに表現を追求し
高め合う無数の可能性に
シェンクはどれだけ敬意を払っていたことでしょう。

シェンクはその生涯において、
いくどとなく歌曲集に取り組んでいたようですが
歌曲集はあくまでオランダ語による試みなので
イタリア語による題名を付けるわけにはいかなかった。
そこで、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音によるこの作品に
「スケルツィ・ムジカーリ」と付けたのでしょう。

スケルツィは広く「冗談」という意味ですが
それは音楽の彩り、遊び心、ユーモア
そして、既成概念に挑戦する新しいアイディア、個性
そんなことが連想されます。
そして、そのどれも
音楽に留まらず
芸術として欠かすことのできない要素と言えるのではないでしょうか。

♬♬♬

シェンクはこの曲集で
依頼主の名前を
「ジョバンニ・グリエルモ」とイタリア語で表記し
自身の名前も「ジョバンニ・シェンク」と名乗っています。
「ヨハン・シェンク」「J・シェンク」ではなく
解説の冒頭で「G・シェンク」と表記したのは
こういう背景があったのです。

#楽の戯れ