江端伸昭先生のレクチャーに向けた視点・論点②
バッハのガンバソナタ、
チェンバロオブリガートによる編成をどう弾くか
ガンバソナタは、一部分例外はあるにしても
チェンバロオブリガートとの3声で書かれている。
バッハに限らず
チェンバロが入るガンバのレパートリーは
通奏低音を伴うものが多い中
オブリガートチェンバロとのものは珍しい。
バッハのガンバソナタをレッスンする場合には
①ガンバのレッスン
②生徒さんがチェンバロを弾く方に来てもらって
二人にレッスン
③チェンバロを弾く方のレッスン
この3つのパターンがあるけれど
いずれにせよ、最初は
抵抗感、違和感を示される気がする。
ガンバとオブリガートチェンバロによる3声は
いずれも同等な関係で
主声部や伴奏という位置関係はない。
チェンバロでは3声のシンフォニア
ガンバはコンソートなどで
そういった3声の曲を弾くことはあるけれど
2声がチェンバロ、1声がガンバだと
うまく馴染んで、一緒に歌えるようになるまでに
意識の変化が必要なのかも知れない。
ガンバとチェンバロは音色が違う。
音の立ち上がり、減衰、弓で歌うか否か
フレーズやゼクエンツの表現方法が違う。
本能的に
人は合わせようとしてしまう。
チェンバロが歯切れ悪くなったり
ガンバが乾いた音になるのは残念なこと。
バッハの書いた3声に対して
各楽器それぞれのアプローチを持つことが大切であり
更に、それぞれの楽器の魅力が出るから
名曲なのだと思う。
どうやって自分なりの弾き方を見つける
スタートに立てたか
学生時代を振り返ってみた。
二十歳過ぎのとき、イタリアで
マドリガーレのディミニューションを
ひたすら弾いた1年間があった。
ヴィオラ・バスタルダのディミニューションは
4声のマドリガーレ声部間を
5声目の声部として、縫って進んでいく。
マドリガーレはチェンバロかハープの方に
弾いていただいた。
「とにかく、ひたすら弾きなさい、あとは責任を持つから」と
当時の指導教官だったジーニ先生に言われて
その1年間から学んだものは大きい。
マドリガーレも伴奏ではなく、
同等な声部として一緒に進む。
ディミニューションも膨大な装飾が出てくるけれど
曲の始めはマドリガーレのあり方に準じた音型であることが多い。
その中から
他のレパートリーにも応用できる
息づかい、スピード感の合わせ方を学んだように思う。
平たく言ってしまうと
一つのことに集中して
感覚的に、体で学ばせていただいた。
ただそれは、
その時私とジーニ先生だからできたことで
そうできる環境、条件のほうが珍しい。
レッスンは「生徒さん」それぞれで
相手があることとして成立するので
明確な答えはないけれど
それでもお声掛けや、
「意識をこう向けたら」というご提案を
指導者側からできるのであれば
ぜひ、知りたい。