「山本有三記念館春の朗読コンサート2024」に寄せて⑨
今回は、ヴィオラダガンバ演奏プログラムで
Aフォルクレの小品を取り上げる。
ヴィオルは
ルイ14世に愛された楽器であった
マレは天使のようにヴィオルを奏で
フォルクレはそれを
悪魔のように奏でる
これはユベール・ル・ブランによる
有名な言葉である。
しかし、そもそも「悪魔」とは
どんなものだろうか
当時の人々は
どんなイメージを抱いていたのか
何回かに分けて
悪魔について、探ってみたい。
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【ルネサンス期に描かれた地獄】
ここで、ダンテの「新曲」に触れてみたい。
ダンテの「新曲」は
地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部による、
全14,233行の韻文による長編叙事詩であり、聖なる数「3」を基調とした
極めて均整のとれた構成をとっている。
イタリア文学最大の古典とされる。
当時の作品としては画期的なことに
ラテン語ではなく
トスカーナ方言で書かれていて
「イタリア語」が成立、体系化される
きっかけになったと言われる。
ここでは、悪魔の話なので
「地獄篇」を扱ってみよう。
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西暦1300年の聖金曜日、
人生の半ばにして暗い森に迷い込んだダンテは、
地獄に入った。
古代ギリシャの詩人
ウェルギリウスに案内され、
地獄の門をくぐって地獄の底にまで降り、
死後の罰を受ける罪人たちの間を
遍歴していく。
「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」
と銘された地獄の門を抜けると、
地獄の手前に、
罪も誉もなく人生を無為に生きた者が、
留め置かれている。
その先にはアケローン川が流れており、
冥府の渡し守カロンの舟で
渡ることになっている。
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地獄界は階層構造になっていて
地獄の中心、
地球の重力がすべて向かうところには、
神に叛逆した堕天使である魔王ルチフェロ(サタン)が
氷の中に永遠に幽閉されている。
魔王は、かつて
光輝はなはだしく最も美しい天使であったが、
今は醜悪な三面の顔を持った姿となり、
半身を氷の中に埋めていた。
魔王は、
イエス・キリストを裏切ったユダ、
カエサルを裏切ったブルートゥスとカッシウスの
三人をそれぞれの口で噛み締めていた。
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地獄は、その罪の重さにより
9つの円環の層分けられており
それぞれ担当者がいる。
その担当者は、ミノス、ケルベロス、
プルートといった顔ぶれで
彼らはバロック期に音楽作品で
登場することも多い。
こういった、豊かな地獄のイメージは
フォルクレの時代において
きっと、音楽文化でも作用し
作品を支えたのではないだろうか。
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三鷹市山本有三記念館
第15回春の朗読コンサート
朗読:野田香苗
ヴィオラダガンバ:藍原ゆき
随想『竹』他
Aフォルクレ
『ヴィオルと通奏低音の曲集』
(1747年パリ出版)より
第1組曲から「ラボルド氏のアルマンド」
第2組曲から「ブレイユ氏」「ルクレール氏」
Aキューネル
『1台もしくは2台のヴィオラダガンバと通奏低音のためのソナタ、パルティータ集』
(1698年カッセル出版)より
ソナタ11番ニ短調
Jシェンク
『楽の戯れ』
(1701年アムステルダム出版)より
組曲ヘ長調より「ガボットのテンポで」
2024年5月24日(金)、25日(土)
18:00開演
詳細はホームページをご覧ください
↓
https://mitaka-sportsandculture.or.jp/yuzo/event/20240524_25/