2025.02.08
『十全なるヴァイオル奏者』と、その編成

ベンジャミン・ヘリー
『十全なるヴァイオル奏者』より
小品を4曲、それぞれを演奏動画に分けて
プレイリストにまとめました。

ご視聴いただければ幸いです。

※※※

【『十全なるヴァイオル奏者』と、編成】

『十全なるヴァイオル奏者』が
出版されたと思われる
1699年には
ベンジャミン・ヘリーはすでに故人でした。

この曲集は
彼が育て、彼の意思を継いだ人達によって
まとめられ、出版されたと思われます。

その偉業の功労者には
ヴィオラダガンバの名工として
歴史に名を刻んだ
バラク・ノーマンも挙げられます。

当然ながら、本の中で掲載されている内容は
ベンジャミン・ヘリー門下で
生き生きと演奏されていたものの中で
ほんの一部だったと思われます。

※※※

この曲集は一見
ヴィオラダガンバ無伴奏のために
書かれた曲集に見えます。

無伴奏で演奏しても
楽しめる曲はたくさんあるのですが
私には、その枠に留まらなかったように
思えてなりません。

例えば、曲集内に収められている
a collection of the Psalm tunes set to the Viol, as they are now in use in the Churches where there are Organs.
「オルガンのある教会で現在演奏されている詩篇をヴィオラダガンバ用にした曲集」は
プレイフォードのプロジェクトによって
3声に整理されてまとめられています。
他の作曲者もそれを元に
ヴァリエーションを作っていて
当時は広く知られた、
有名な曲だったようです。
現在も、一部は4声になって
讃美歌として歌い続けられています。

曲集『十全なるヴァイオル奏者』では
確かにその中の1声しか記されていませんが
当時の人は誰でも
そこから多声の聞き慣れた響きを
思い起こすことができたでしょう。

そして、たとえ楽譜になっていなくても
他の声部を弾くこともできたことでしょう。

(続きます)

#十全なるヴァイオル奏者