2023.07.26
「ドゥマシの熱い鼓動」に寄せて②

ヴィオラ・ダ・ガンバの独奏曲といえば
例えば、マレの「スペインのフォリア」の様に
ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のような編成を
思い浮かべる方も多いかも知れません。

また、バッハのソナタは
3声の対位法が主体になっているので
ヴィオラ・ダ・ガンバと
右手で奏する声部が明記されたチェンバロによって演奏されます。
(部分的に例外あり)

ドゥマシが見ていた世界は
それとは、少し趣を異にするようです。

ドゥマシの「ヴィオール曲集」は
ヴィオラ・ダ・ガンバ一台のために
全曲、書かれています。

彼は、序文の中で
そこへの強いこだわりを述べています。

つまり、リュートやチェンバロ一台による
独奏曲集があるように
ヴィオラ・ダ・ガンバ一台のためにも
完全な独奏曲集を出したい、と
そういうことです。

更に、奏法について
①和声を演奏する
②メロディを歌いながら他の声部を弾く
③メロディを歌う
この3つに分けています。

ピッツィカートを④に入れるべきかとも
述べていますが
これについては話が反れるので、
追々触れましょう。

要約すると
メロディを奏でながら同時に自分で伴奏をする
「ヴィオール曲集」を出したかった
ということです。

彼が愛したヴィオラ・ダ・ガンバの特徴をまとめてみると
ギターの様にフレットがついているので
多種多様な重音を出すことができる、
ドゥマシは7弦のヴィオラ・ダ・ガンバを前提にしているようで
開放弦の状態でも1弦と7弦の高低差は2オクターブあり
高めのポジションも使っているので
音域も広い、
そして調性によって、
また使用する左手のポジションによって
箱鳴りや音の厚みが色鮮やかに変わり
空間美を生み出す
原則として、弓による演奏なので
ロングトーンの歌い方がダイレクトに表現しやすい…

ドゥマシの「ヴィオール曲集」によって
私達は、ヴィオラ・ダ・ガンバならではの
楽器の個性溢れる
豊かな世界観に触れることができるのです。

(続きます)