2023.09.11
「フランスいにしえの吐息」に寄せて④

「フランスいにしえの吐息」に寄せて④

今日は、ただの愛の話として
お付き合いいただければ嬉しいです。

今回、マレの「ヴィオール曲集第一巻」からは
堂々と冒頭に位置する
組曲ニ短調を取り上げます。

無言の共通認識からは
一応、「ニ短調」とはなっていますが
ドリア旋法を中心に
イオニア、エオリアと行き来する
モード的な色合いが濃いと思います。

プレリュードが4曲
ファンタジアが2曲
アルマンドが2曲(ドゥブル含めず)
クーラント2曲(ドゥブル含めず)
サラバンドが2曲
ジーグが3曲(ドゥブル含めず)
ロンドーが2曲
メヌエットが2曲
ガボットが2曲…

プレリュードや舞曲が複数個あるのは
マレの組曲を通じても
決して珍しいことではありません。

通奏低音や演奏会全体の編成
会場の響きや企画の趣旨により
状況に応じて自由に選択できること
そこが、バロック音楽の特徴である
作曲者と演奏者の区別が曖昧で
一緒に音楽を作り出す特徴の証なのだと
昔はなんとなく、思ってきました。

そして、私も機会があれば
色んな組み合わせをしてみて
様々な演奏環境に応じた
この組曲が持つ多面性の一端に
触れてみたいと思いました。

でも、立ち位置を
作品を生み出す側に仮設定してみると
演奏上の利便性や
作品にさらなる多角性を持たせるために
複数個、プレリュードや舞曲を入れたとは
どうしても、思えないのです。

これは一見矛盾するし、
うまく私も言語化できていないので
もどかしい限りですが。

一般に、この曲集は
「ヴィオール曲集第一巻」となっていますが
彼は、出版の時にはそう刻んでいなくて
「1台もしくは2台のためのヴィオール曲集」と書いてあります。
通奏低音の譜面は、
ディヴィジョンや他の作品が添えられ
3年後に出版されました。

「ヴィオール曲集第ニ巻」が
後に出版されて、初めて
これが「第一巻」となるわけですね。

ニ短調、もしくは
「ニ」を主音とするドリア、イオニア、エオリア
これらは、ヴィオラダガンバがよく安定する旋法です。

第一巻の楽譜をめくると
冒頭には雄大なプレリュードを筆頭に
計4曲のプレリュードが並び
更に、進むと
ほとばしるようなドゥブルを伴う
アルマンドやクーラント…

マレが、これまで手掛けた
譜面として残っていない作品の数々
それらのエネルギーを帯びた
30歳だったマレの、
その時点の集大成と
見ることはできないでしょうか。

そんな想いがあるので
今回、ぜひこの組曲を演奏したかったし
私のライフワークとしても
深めたいなと思うのです。

#フランスいにしえの吐息