「朗読とヴィオラダガンバで届ける愛の詩」に寄せて⑮
ヴィオラダガンバの演奏プログラムでは
マラン・マレ『異国趣味の組曲』から主に
小品を取り上げ、演奏するが
その他にも、二曲ほどご紹介したい。
『ヴィオル曲集第2巻』から
組曲ニ長調の「人間の声」と
『ヴィオル曲集第5巻』から
組曲ヘ長調の「アルペジオの前奏曲」である。
🌸🌸🌸
『ヴィオル曲集第5巻』は
1725年に発表された。
当時、マレは69歳で
これが生涯最後の曲集となった。
1679年から勤めている宮廷職を
息子に譲った時期でもある。
そして、3年後の1728年8月
彼はこの世を去った。
当時、彼の死はこのように報じられた。
最近、また
大変著名な音楽家が世を去った。
全てのガンバ愛好家が敬愛した
マレ氏である。
彼はこの楽器を
最上級に完全なものに
引き上げた人である。
ガンバ演奏家としての特別な才能に加え
彼は作曲にもたいへん優れ
いくつかのオペラも残している
🌸🌸🌸
マレは『ヴィオル曲集第5巻』(1725)の
序文で、このように語りかけている。
これらの組曲は
愛好家の様々な趣向に応えるため
演奏の容易なものから始まり
やがて難しい曲が現れてくる
仕組みになっている。
難しい曲は曲名が
花模様で囲まれているので
易しい曲と簡単に見分けがつく
彼は『ヴィオル曲集第1巻』(1686)の
序文の冒頭では
このように述べていたのである。
ヴィオルを弾く者の技量の差を配慮して
これまで、私は
和音の量を加減しながら
曲を渡してきた。
しかし、このように配慮したことが
裏目に出てしまい
私の曲が作曲した通りに弾かれていない
ことがわかったので
ついに私は
自分で弾く通りにつけるべき装飾も
全て書き込んだ曲集を
出版することにした
🌸🌸🌸
マラン・マレは
生涯に5冊の『ヴィオル曲集』を出版し
他にも室内楽や
バロック音楽のジャンルでは最高峰である
オペラもいくつも手掛けた、
最も成功を収めたヴィオル奏者と言える。
そのためには
自分のイメージを強く具現化し
発信する、
沢山の人を巻き込んでいくようなエネルギーを
持っていた人であろう。
『ヴィオル曲集第1巻』の序文からは
定まった、明確なものを
ピンポイントで提示する
強い強い意志を感じる。
そして、同時に
成功者が持つ「受容力」
どんな仕事にも
自分ではどうする事もできない事象が
必ずついてくる。
いいだけのこともなく
悪いだけのこともない
その中で、目の前に現れたものを
どう受容するか
そして、どう対応するか
そんな「受容力」を
『ヴィオル曲集第5巻』の序文から
私は、感じてしまう。
🌸🌸🌸
曲集内の組曲ヘ長調には
冒頭にきれいな前奏曲がついている。
クーラントは見られないのだが
それは同曲集内の他の組曲にも当てはまる。
アルマンド、サラバンド…、と続き
組曲の一番最後に
この「アルペジオの前奏曲」が置かれている。
フレージングも、弓使いの指示も
バロックの慣例にのって
最小限に留め
ただ、美しい和声進行に委ねた
アルペジオで構成された前奏曲で
この組曲は、終わるのである。
「終わりは、新しい始まり」とは
彼の作品にも随所に見られる
メッセージであると思う。
🌸🌸🌸
演奏会のご案内
〈朗読とヴィオラ・ダ・ガンバで届ける愛の詩〉
『かのひと 超訳世界恋愛詩集』菅原敏
マラン・マレ 「人間の声」「アラベスク」他
2024/3/16(土)
淡路町カフェカプッチェットロッソ
11:30〜、14:30〜
3500円 ドリンク&お菓子つき
完全予約制
お申込み
ventvert0403@gmail.com
#朗読とヴィオラダガンバで届ける愛の詩