2024.10.11
「Tヒュームの世界」に寄せて②

「Tヒュームの世界」に寄せて②
(memento mori 死を忘れることなかれ)

Tヒュームは、小品「死ぬこと」を
曲集中の13番目においていた。

けれど、おそらく印刷所のミスではないかと思うが
12番と誤表記されてしまった。

目次を見ると
4番の小品が2曲ある。

※※※

歴史的に「13」の数字が
特別な意味を持つようになった
背景を少し探ってみたい。

いわゆる、キリストの処刑を
「13日の金曜日」とする説については
近代以降に言われるようになったらしい。
ユダが13番めの弟子だったという説にも
根拠がなく
言うまでもなく、12人の弟子の一人である。

むしろ、「12」という数字のほうが
特別な区切りだったと見るべきであろう。

現代のように大きい単位の数と触れる日常とは
少し違った感覚が
昔にはあったと推察すると
1年間が12ヶ月だったり
時間を図る数字や、その単位など
ある意味「12」が完結した数で
そこから一つ増えた「13」は
未知のものへの恐れなどが
含まれていたのではないだろうか。

音楽家にとっても
教会旋法や調性に関連する数だったり
12曲もしくはその倍数を有する曲集が
しばしば見られたりなど
身近な数だったと言えよう。

決まったもの
繰り返すもの
周知のもの

その枠組みから一歩出るということは
いつの時代にも、「死」になぞらえられる
心の決別を要求されるような
勇気のいるものだったとも
読むことができるように思えてならない。

※※※

本当は、「13」に死を扱う小品をおいたほうが
レトリック的に美しく
おそらく、凡ミスでズレてしまったことは
残念だったとしか言いようがない。

ちなみに、なぜか2曲を預かることになった
数字の「4」は、
「3」で生じた生産性を
定着、安定させるという意味がある。
「4」→「し」→「死」という連想は
Tヒュームの文化圏では、なかった。
日本語の発音によるものなので。
念の為…

とはいえ、
数字から作品を見ていく視点は
バロック時代にも頻繁に用いられいただろうし
イメージを豊かにする、
興味深いものだと思う。

(続く)

【演奏会のご案内】

藍原ゆきのヴィオラダガンバ カフェ
Tヒュームの世界

2024/11/17(日)13:30開場、14:00開演

3500円(要予約)ワンドリンク&お菓子付き

会場:カフェヴェルデ
東京都世田谷区松原3-33-5
京王線、東急世田谷線下高井戸駅より徒歩3分

プログラム:トバイアス・ヒューム
『フランス、ポーランド等の第一アリア集
(キャプテンヒュームの音楽的ユーモア)』より
1605年ロンドン出版
「一つの問い」「一つの答え」
「キャプテンヒュームのパヴァーヌ」
「愛の別れ」
「死ぬこと」「生きること」「再び善きこと」他

お問い合わせ、お申し込みはこちら
http://yuki-aihara.com/contact

当演奏会関連記事
https://note.com/shiny_dahlia839/m/m50242624b53b

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