2025.02.08
『十全なるヴァイオル奏者』生きた本として読む時に、必要なこと

ベンジャミン・ヘリー
『十全なるヴァイオル奏者』より
小品を4曲、それぞれを演奏動画に分けて
プレイリストにまとめました。

ご視聴いただければ幸いです。

※※※

【生きた本として読む時に、必要なこと】

今回、YouTube動画にする際に
渡邊温子さんに特別にお願いをして
通奏低音部分を書き足して
弾いていただきました。

この『十全なるヴァイオル奏者』は
故人であったベンジャミン・ヘリーの
志を継ぐ人達によって
出版されたということは
すでに述べたとおりです。

一見、無伴奏に見えるこの曲集は
ベンジャミン・ヘリーが使用した小品集。
当時は、これをアイディアの出発点として
多様な用いられ方で
演奏されていたのではないかと思います。

今回、通奏低音をチェンバロで
付けていただいたことにより
以前とは違う色彩感が持てたりと
沢山の発見がありました。

曲集内では、
序文で装飾についても触れられていて
実際に楽譜上では沢山指示がありますが
これは、必ずしもそのとおりに
演奏するのではなくて
場合に応じて判断することのようです。

そこに、アイディアを提示するための
曲集のあり方
いわば「素材」であって
扱われ方は、演奏者の意思や
そのコミュニティの目的などに委ねられる
幅の広さが伺われるような気がします。

※※※

私は2010年から音楽教室をやっていまして
レッスンで使うものを少し
体系化してまとめることはできないかと
お話をいただいたことがありましたが
実際には、生徒さんのニーズも多種多様で
演奏経験も、「癖」というか、傾向も
それぞれなので
実際には、その都度そこに合わせるという
やり方が一番いいと思っています。

そうすると、『十全なるヴァイオル奏者』

無伴奏で演奏技術にクローズアップするにも
時に、複数台のヴィオラダガンバで一緒に弾き
息使いや、そこに準じた弓使いを
お伝えするのにもちょうどよく
そして、チェンバロに入っていただくと
更に具体的な和声感によるイメージと繋がる…

ヴィオラダガンバの大切なことを
お伝えするのに優れているだけでなく
生きた作品であるように思えるのです。

そして、当時のあり方に心を馳せる時
古楽器を演奏するための資料は
ただの知識や情報だけではない
心のときめきや喜びまで伝わり
受け継いでいくものなのだなと思います。

#十全なるヴァイオル奏者