2026.01.22
三沢栄一様と訪ねてーとにかくね、楽器が欲しかったんだ③

三沢栄一様を訪ねて ―

ヴィオラ・ダ・ガンバの詩魂・藍原ゆきが、日本古楽黎明期を支えた先達、三沢栄一様を訪ね、その歩みと想いを辿る記録。

資料も楽器も乏しかった時代に、音楽への情熱と信念で道を切り開かれた方々がいた。

そのおかげで今、私たちは「古楽を日常に感じる時代」に生きている。

三沢様のベルトランモデルをお預かりしたご縁から始まった“静かな継承”の物語を通して、

古楽という文化の深層と、現代に息づく敬意の形を記していきます。

【とにかくね、楽器が欲しかったんだ③】

それで、ずっとヴィオラ・ダ・ガンバで弾くほうがいいと思って
それで興味を持ったんだけれど
地元の大学に、そういう楽器があるって言うから
学生さんが買えるようにね。

オリジナルももちろん(見られるところに)ないし
楽器制作家だっているかわからない
そういう時代だったから。

たぶん、大橋先生がアドバイスしたんだと思う。
コントラバスを作っている方にね。

やはり、コントラバスは、当時から
ヴィオール、ではないにしても
ヴァイオリン属とは違うということでね。
背中の膨らみとか、そういう特徴はあるけどね。
(注・ヴィオール属は、背中が平たいものが多い)

そういう事になってね、
コントラバス制作家に依頼したみたいなんだ。

でね、その頃の資料だと
アーノルド・ドルメッチ…
彼の一家が古楽器をやっているっていう
資料など、あったんだ。

その頃の資料、私持っていますよ。

〈ここから、私の記録とその後の経緯〉
この時に私は、三沢様から、過去の貴重な資料や論文をお預かりしました。
「私が持っているより、いいから」とおっしゃられたので、
私はそれを、“託していただいた”のだと受け取っています。
おそらく、もう簡単には手に入らないだろうと思われるものの中に、
非常に興味深い資料が、いくつも含まれていました。
私自身も学生時代、いわゆる「重版されている」、
ヴィオラ・ダ・ガンバの古楽復興期の教本から学びました。
それらはとても勉強にはなりましたが、
実際に私が「教える仕事」の中で使うことは、ほとんどありません。
それは、時代の流れが大きな要因だと思っています。
古楽復興期は、学術的にヴィオラ・ダ・ガンバを捉え、
確立された美意識を求め、
再現可能な状態に定着させることを重要視していた時代だったように思います。
一方で、今の流れをマクロにひと言でまとめることは、あえて控えますが、
私の知る限りでは――学生時代の私自身も含めて――
ヴィオラ・ダ・ガンバを学びたい人たちは、
「人間存在としての声」を投じ、
高次自我も含めた「心」に力を注ぐ行為として、
演奏を求めている人ばかり
という印象があります。
それは
「当時、楽器がどうであったか」という事実を尊重しながらも、
その上でさらに、
「自分にしかできない」という背景を持った表現を求める姿勢だと思うのです。

〈三沢様から託された教材について〉
三沢様からお預かりした資料は、
当時の学術的後ろ盾を忠実になぞりながらも
それぞれの学びの段階に沿って
教材としての楽曲選びが非常に的確で
学習者のファンタジーをそそる要素も多く含んでいる
という、きわめて稀有なものでした。
それがなぜ、教本として広く普及することなく、
結果的に埋もれてしまったのか――
その理由は、やはり「時代のニーズ」なのだろうと、私は感じています。
もちろん、私がこれまで触れなかっただけで、
どこかで、どなたかが大切に守りながら、
後進の育成に当たられている可能性も、十分にあります。

〈今後について〉
これ以上のことは、注意深く触れたいところですが、
著者や出版社への配慮を前提としたうえで、
いつか、形を慎重に選びながら、
この教材について、あらためてお伝えできる日が来たらと思っています。

まとめはこちらから
https://note.com/shiny_dahlia839/m/m5a866ffd81c0

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